1. いま聞きたいQ&A
Q

サブプライムローン問題とは、どのようなものですか?(前編)

住宅バブルを象徴するサブプライムローン

今年(2007年)の7月下旬から8月にかけて、「サブプライムローン」にからんだ問題が世界の金融市場を大きく揺さぶっています。日米欧・アジアの世界同時株安に加えて円高の進行、短期金融市場での流動性不安など、その影響は当初の予想以上に広範かつ深刻なものとなりつつあります。

サブプライムローン問題の本質を理解するために、問題点を大きく2つに分けて整理してみたいと思います。まずは、サブプライムローンそのものが抱える問題点について考えてみましょう。

「サブプライムローン」とは、所得の低い人やクレジットカードで返済延滞を繰り返す人など、いわゆる信用力の低い個人を対象とした住宅ローンのことです。通常の住宅ローンに比べて金利が高く設定されている分、審査基準は緩くなっています。米国で住宅ブームが本格化した2004年ごろから普及・拡大しました。今日では、米国で住宅ローンを借りる人の約15%が利用していると言われ、残高は米国における住宅ローン全体の1割程度にまで達しています。

一般にサブプライムローンは、最初の2年ほどは金利が低く固定され、それ以降は大幅に金利が高くなり、なおかつ変動金利が採用される仕組みになっています。そのため利用者は、購入した住宅の価格が値上がりした時点で、その住宅を担保にローンを借り増して対応したり、信用力が高い個人向けの「プライムローン」に借り換えをおこない、金利負担を軽減するといった措置を講じてきました。

しかし昨年(2006年)、米国の住宅ブームが終わって住宅価格が上昇から下落に転じると、このような担保価値を裏付けとした借り増しや借り換えができなくなりました。FRB(米連邦準備制度理事会)が実施した利上げによってローン金利が上昇したことも影響し、ローンの返済に行き詰まるケースが続出します。

こうして破綻するサブプライムローンが急増したわけですが、そもそもこのローンが一時的にでも機能したのは、米国で住宅価格が一本調子に上昇を続け、多くの人が今後も上昇が続くと楽観的に信じたからです。米国では2005年ごろから住宅が投機の対象になる例も多く見られ、関係者のあいだでは「住宅バブル」を危惧する声もあがっていました。いわばサブプライムローンは、米国における住宅ブームの異常な加熱ぶりを象徴するような存在だったわけです。

ローンの証券化が連鎖的な損失を生んだ

2つめの問題点は、上記のような危うさにもかかわらず、多くのヘッジファンドや金融機関がサブプライムローンと直接的、間接的に関係をもっていたことです。同ローンで個人に融資した住宅ローン会社は、回収リスクの一部を回避・転嫁する目的でその債権を小口証券化し、RMBS(住宅ローン担保証券)として売り出しました。RMBSは米国債などに比べて利回りが高かったため、ヘッジファンドなどがこれを購入したのです。

ヘッジファンドは銀行や証券会社などから資金を借り入れ、RMBSの投資を大きく膨らませていきました。さらには投資信託など、一般の投資家向け金融商品のなかにもRMBSを組み入れるものが現れました。こうしてサブプライムローンに関連した投資が世界中に広がるなか、昨年から今年にかけて同ローンの焦げ付きが増加し、RMBSの価格が大きく下落。住宅ローン会社の破綻が相次ぐとともに、RMBSに投資していたヘッジファンドも、その資金を提供した金融機関も連鎖的に損失を被ることになったのです。

この問題の発覚当初は、世界の金融市場に及ぼす影響は限定的と言われていました。しかし、混乱の沈静化に向けて各国の中央銀行が動き出すなど、ここにきて事態はそれほど楽観もできない様相を呈しています。どのような混乱が、どうして拡大することになったのか。次回の後編で、詳しく見ていくことにしましょう。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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