いま聞きたいQ&A

毎月分配型投資信託で考える金融リテラシーの重要性

商品選びを含めて、投資にはベストと言い切れる形など存在しません。仕事や人生と同じく、誰もが自分なりの投資観を養いながら、その時々でベターな選択を積み重ねていくしか方法はないのです。一例として毎月分配型投資信託を取り上げ、ベターな選択を行うために必要な知識や考え方について検証します。

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Q.投資において金融リテラシーが必要と言われるのはなぜですか?

投資は決して簡単なものではありません。具体的には、まず「何に投資したらいいのか分からない」という商品選択の難しさが挙げられます。もっと正確に言うならば、「何に投資したら将来的に好ましい成果(リターン)が得られるのか分からない」という難しさです。

投資はあくまでも結果論なので、その成果は各人の投資期間によって変わってきます。いま購入した株式や投資信託が3年後に大きなリターンをもたらしたとしても、10年後にはどうなっているか分かりません。20年や30年といった長期の資産運用を目指している人は、実際に20年後や30年後になってみなければ投資の成果を知ることができないわけです。

つまりは株式や投資信託などを購入する時点において、ベストと言い切れるような選択肢は存在しないことになります。だとすれば、将来的な資産運用のゴールに向けて、私たちは時々で「ベターな選択」を積み重ねていくしかありません。

その意味で、投資は仕事や人生と似ています。何が正解か分からないし、まだ見ぬ将来を完全にコントロールすることもできない。だからこそ、少しでもベターな選択を行うために、基本的な知識や考え方を身に付けながら、仕事観や人生観と同じく自分なりの投資観、すなわち金融リテラシーを養っていくことが重要になるのです。

人によっては金融リテラシーを習得すること自体が難しく、面倒くさいと感じる場合もあるでしょう。しかし、だからといって何も考えずに売れ筋の商品に飛びついたり、手っ取り早くもうかりそうな商品を探すというのは、あまりに安易過ぎるような気がします。

毎月分配金の特徴を知るためには多くの観点が必要

ここにきて、毎月分配型投資信託(以下、毎月分配型)への注目が再び高まってきています。投資信託協会によると、2022年には毎月分配型が6年ぶりに5700億円の資金流入超過となりました。

特に最近では、定期的に利益を確定できる点に魅力を感じて、20代や30代の若年層においても毎月分配型に興味を持つ人が多いようです。前述したように、長期の資産運用では投資成果が分からない状態が長く続くため、そうした不確実性は耐えがたいという心理が若年層に働いているのかもしれません。

毎月分配型は分配金の支払いによってリターンの複利効果が薄まるため、長期の資産運用には不向きといわれています。一方で、相場が下落して投資信託の基準価額が下がるケースでは、基準価額の下落幅(運用成績のマイナス幅)を相対的に小さく抑える効果も得られます。分配金を支払う分だけ基準価額が下がり、その下がった値を基にして下落率を計算するからです。

例えば、ある月に基準価額が10%下落したとしましょう。前月末の基準価額が1万5000円だった場合、当月末の基準価額は10%下がって1万3500円となり、下落幅は1500円です。ところが前月末に分配金を1000円支払って基準価額が1万4000円まで下がっていた場合には、当月末の基準価額は1万2600円となり、下落率は同じ10%でも、下落幅は1400円と相対的に小さくなります。

こうした効果も含めて考えれば、分配によって定期的に利益を確定すること自体は決して悪いことではありません。ただし、投資信託の分配金がどういう性質のものであり、毎月分配型で運用した際のリターンがどのように計算されるのかについては、正しく理解しておく必要があります。

投資信託の分配金には大きく分けて、運用益から支払われる「普通分配金」と、投資元本を取り崩して支払われる「特別分配金」の2種類があります。これらを株式投資や債券投資にたとえると、普通分配金はいわば株式の値上がり益を配当に回しているようなものであり、特別分配金は債券の元本を取り崩して金利に回しているようなものです。投資効率の面で考えれば、毎月分配型が株式や債券よりも劣ることは明らかでしょう。

私たちが毎月分配型で運用した場合の最終的なリターンは、運用中に支払われた「分配金の合計額」と、売買時の基準価額に基づく「評価損益」によって決まります。支払われた分配金の合計額がいくら大きくても、売却時の基準価額が購入時に比べて大きく下がっていたら、トータルで計算した最終的なリターンがマイナスになる可能性もあります。

毎月分配型の商品選択にあたっては、過去に記録したトータルリターンを確認することが大切です。トータルリターンは各商品の月次リポートなどに、「分配金を決算日の基準価額で全額再投資したと仮定した場合のリターン」として掲載されています。例えばその数値が10年以上の長期にわたって十分にプラスとなっていれば、長期的な資産運用としての成果も期待できることになります。

ここまでざっと挙げただけでも、毎月分配型の特徴を正確に知るためには、多くの観点が必要であることが分かります。なかでも分配金の種類と性質については、株式の配当金や債券の金利に関する知識を備えたうえで、それらと比較・検証する必要もあり、より幅広く金融リテラシーが求められることとなります。

初心者など投資に不慣れな人にとっては難しい内容かもしれません。しかしながら、そうした難しさを頑張ってクリアしたうえで、なおかつ「自分は毎月分配型を選ぶ」という決断をした人こそが、真にベターな選択を行ったと言えるように思うのです。

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