いま聞きたいQ&A

投資スタイルの優位性は、個人の資産運用には関係ない?

世の中の金利が上昇すると、「グロース株(成長株)投資」より「バリュー株(割安株)投資」が、「インデックス運用」より「アクティブ運用」がそれぞれ優位になると言われています。それなりに説得力のある議論ですが、少し考え方を変えてみると、一般個人の長期的な資産運用にはさほど関係ないことが分かります。

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Q.投資スタイルについて内容と注目点を教えてください。

投資対象となる銘柄の選び方によって、株式投資にはいくつかのスタイルがあります。例えばグロース株投資やバリュー株投資は、「どのような種類(WHAT)の銘柄を選ぶか」という観点に立った投資スタイルです。投資信託のインデックス運用やアクティブ運用は、「どのようにして(HOW)銘柄を選ぶか」という観点に立った投資スタイルと言うことができます。内容を簡単におさらいしておきましょう。

●グロース株投資:利益成長が著しい企業に、今後のさらなる成長を期待して投資する
●バリュー株投資:株価が本来的な企業価値より低い銘柄に、株価の戻りを期待して投資する
●インデックス運用:株価指数に値動きが連動することをめざして、機械的に運用する
●アクティブ運用:ファンドマネジャーが自らの判断で銘柄を選び、能動的に運用する

このところ世界的に金利が上昇傾向にありますが、金利が高くなるとグロース株投資よりバリュー株投資が、インデックス運用よりアクティブ運用が、それぞれ投資収益を得るうえで優位になると言われています。その理由は、おおむね以下のとおりです。

グロース株に該当する銘柄は、株価の割安さを示す指標であるPER(株価収益率=株価÷1株当たり利益)が平均より高いのが一般的です。金利が上昇すると、それに伴って債券の利回りも上昇し、債券の投資魅力が相対的に高まります。債券の投資魅力と比較した場合に、PERが平均値を大きく超えるような銘柄の割高さは正当化されにくくなり、投資家の関心はグロース株からバリュー株へと移っていきます。

インデックス運用では、株価指数の構成銘柄にまんべんなく投資するため、いわば「玉」に相当する銘柄と「石」に相当する銘柄を同時に買うことになります。金利が上昇すると、財務力の弱い企業をはじめとして「石」の銘柄は株価が低迷しやすくなり、玉石混交のインデックス運用も伸び悩む傾向が強まります。株式投資では「玉」を探す銘柄選別が重要となり、アクティブ運用の効果が高まるというわけです。

どんな時でも通用する自分の観点を身につける

私たちは今後、個別株についてはバリュー株投資を、投資信託についてはアクティブ運用を選択すべきなのでしょうか。実はこうした疑問を根底から覆すような考え方があります。

ある株式投資信託のファンドマネジャーは、自身の長期運用方針について以下のように語っています。「そもそも『売る必要がない企業』しか買っていないので、足元の相場動向でポートフォリオは変更しない」

この投資信託では銘柄選定において、他社が容易にまねできない競争優位性を特に重視しているといいます。圧倒的な参入障壁を持つ企業は、どのような経済状況においても顧客の需要を確実に取り込める点が強みです。

すなわち、この投資信託は「先に個々の魅力や将来性ありき」で銘柄を選んでいるわけです。それが結果としてグロース株だろうがバリュー株だろうが、気に留めないということでしょう。こうした銘柄へのアプローチは、長期の資産運用をめざす一般個人にとっても参考になりそうです。

個人が金利動向などに合わせて投資する銘柄を考えたり変更したりすることは、時間的にも労力的にも限界があります。むしろ、どんな時でも通用する自分の観点(投資スタイル)を身につけることが先決ではないでしょうか。例えば主力事業で世界トップのシェアを握っている企業や、特定の事業分野で高いシェアを誇る企業などを中心に、「いつでも有望な銘柄選び」を私たちも心がけたいところです。

インデックス運用とアクティブ運用の優位性については、株価指数をどのような対象と位置付けるかによって見方が変わってくると思われます。

今年(2023年)4月末時点で、東京証券取引所のプライム、スタンダード、グロースの各市場に上場している企業の合計は3794社にのぼります。このうちTOPIX(東証株価指数)を構成するのは2160銘柄で、日経平均株価に採用されているのは225銘柄です。

株価指数は一般に株式市場の平均値を表すと言われていますが、実際のところは、数ある株式銘柄のなかから特定の銘柄を選び出し、それらの値動きを平均化したものに過ぎません。つまり日本株のインデックス運用は、「2160銘柄や225銘柄のアクティブ運用」と見なすこともできるわけです。

同じアクティブ運用どうしと捉えて比較すれば、優劣を評価する際のポイントは、過去の成績からみた「運用の腕」に尽きるのではないでしょうか。日本株投資信託では過去1年~10年の運用成績(22年末時点)において、アクティブ型の7~8割程度がインデックス型に負けているというデータがあります。

一方で、過去20年以上の運用成績が株価指数を上回っているアクティブ型もいくつか見受けられます。これらはファンドマネジャーがさまざまな投資環境の変化に対応しながら、長期にわたって「2160銘柄や225銘柄のアクティブ運用」を上回る運用手腕を発揮し続けてきたと考えることができます。個人が長期の資産運用をめざすうえでは、金利動向などにかかわらず、常に有力な選択肢となり得るでしょう。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。